薬/弓士





「つ……ぅ」 「少し切れたか。」 「お前が無茶、するから…だろ…っ」 「……力を抜けと言った筈だが。大人しく言うとおりにせんからだ。」 「俺は、待てって、言ったのに、がっつくからだ!」 「…まあ今更何を言った所で、結果は変わらんな。」 「…………。」 魔力供給が終わり、アーチャーに強制的に風呂場に連れて行かれ、 なかに注がれたものをかきだしつつ体の隅々を綺麗に洗われた後、 再び二人で自室に戻ってきた。 行為の最中に傷ついた後孔を手当てする為に。 アーチャーは俺の足を掴んで大きく広げさせる。 抵抗が無いわけではなかったが、長引かせるのも嫌だったので俺は自らも足を開く。 晒された下肢。後孔をアーチャーはじっと見て、用意した軟膏を指にとり、 切れたそこにあてがってきた。 馴染ませるように入口を撫でて、ゆっくりと挿しいれてくる。 その動きは、行為中のそれとは違い優しく丁寧で。 だが俺の体は、それがアーチャーの指だと認識するだけで、性的なものとして受け取ってしまう。 自分でも嫌になるが、内部が勝手に蠢いてアーチャーの指を締めてしまった。 傷ついたそこはちりちりと痛むが、同時にむず痒いような感覚も湧いてしまって堪らない。 「……こら、そう誘うように締めるな。」 「仕方ない、じゃないか……っ」 アーチャーのからかうような言葉に顔が熱くなり、反射的に言い返す。 とっくに自分の中心はしっかり反応し、先端から先走りまで零しはじめていて。 それに目の前の男が気付いていない筈がない。 「もう、いいだろ…」 十分に後孔に軟膏は塗られたはずだと俺はアーチャーにそこから指を抜くよう促す。 ふむ、と頷きアーチャーはあっさりと指を引き抜いた。 その瞬間、ひゅ、と喉が鳴ってしまい唇を噛み締める。 やっと解放されて、俺は勃ってしまった中心を自分でどうにかしようと立ち上がろうとして、 それはアーチャーによって遮られた。 「…アーチャー?」 なにを、と俺が問うより早く。 アーチャーは俺の下肢に顔を埋めてきて。 先程まで後孔を弄っていた手が、今度は勃ちあがった熱に触れてくる。 掴んで固定し、俺のそこはアーチャーの口内に包まれた。 濡れた熱い粘膜の感覚にぞくぞくと体の芯に痺れが走る。 吸われたかと思えば、ねっとりと舌で舐られて。 的確に与えられる愛撫に息が上がる。 「は…ぅ、あー ちゃ……っ」 アーチャーの頭に手を置き、髪を掻き混ぜる。 腰がまるで強請るように勝手に揺れて。 羞恥を感じつつも止められず、ただ息を吐く。 僅かに伏せたアーチャーの目に、胸が疼いた。 「ん… く もぅ……っ」 限界を訴えるとアーチャーは深く俺を呑みこみ、きつく吸い上げてきて。 「――ぃ あ……っ!!」 小さく声を上げて、あっけなくアーチャーの口内に精を吐き出した。 何度かアーチャーの喉が動くのをぼんやりと見る。 アーチャーは最後に力を無くした俺の先端を、ちゅ、と音を立てて吸ってから 漸く顔を上げて、手についた残滓も残さず舐めとった。 「何を呆けている。おさまっただろう?早く服を着て寝てしまえ。」 冷静に告げる男の声で、はっと我に返り、急いで傍に置いていた服を掴んで身に着けた。 お前はいいのかと言いかけて、応えられない自身をかえりみて、やめる。 アーチャーは常と変わらない様子で悔しくなる。 だからだと思う。 「…アーチャー。俺も、口で してやる。」 その俺の言葉に、アーチャーは目を見開いた。 素直に驚いているようだ。 「…お前から言い出すとは、珍しいな。」 そう言って、真意をはかるように見てくる。 確かに自分から言い出してやることは殆ど無い。 目的は魔力供給なわけだから、そうすることにあまり意味が無いし。 あとは俺自身が、その行為に慣れないから。 アーチャーからの否定は無いので、俺は傍に寄って男の下衣に手をかける。 前をくつろげ、とりだしたアーチャーの中心は、僅かに兆していた。 「…なんだ、お前も同じだったんじゃないか。」 自分だけではなかったことにほっとして言えば、 「あれだけの痴態を、見せられればな。」 口端を上げてアーチャーが言ってくる。 その言い様にむっとしつつも、俺はぱくんと男の中心を口の中に招き入れた。 口内でひくりとそれが震える。 息を詰める気配に目線を上げると、眉を寄せたアーチャーの顔。 じんと下肢が熱くなったが、見ないふりをした。 本当は、後先考えずに後ろで繋がりたいという気持ちもあったが、 アーチャーの気遣いを無駄にはしたくなかったので、それを堪えて。 俺は張りつめた熱を口と手で愛撫した。 これで少しでも満足してくれればいいなと、思いながら。 『弓士で甘く』でリクもらってました。 書き終わってから、甘いというリクであったことに気付き、 でも結果オーライでほっとしたり。 アーチャーが我慢の子です。士郎的には物足りない。 薬、ということで、媚薬とか媚薬とかあるわけですが、あえて違う方向で。 そしたらあんまり薬って御題にそってないような…。