のけぞった喉元に手を伸ばす。手のひらで包み込むように。 呼吸に合わせて上下する士郎の喉、ぐ、と手に力をこめれば容易く気管を圧迫する。 それと共に繋がった箇所も、よく締まる。 「っ……ぐ、ぅ、」 呻く声。だが士郎は抵抗しない。 ただ、加害者であり被害者でもあるアーチャーに腕を回し、しがみつくだけ。 じわりじわりと士郎を追い詰めるアーチャーの瞳は、熱を孕みながらも冷えていた。 相反するものを抱えながら、アーチャーは士郎にゆっくりと口付けて呼吸を更に奪う。 士郎は力無くアーチャーの背中に爪を立てる。 そんな些細な動作さえも失われる頃に漸く、アーチャーは士郎の喉元から手のひらを外し、唇も離す。 げほげほと盛大に咽る士郎の背をアーチャーは緩く撫でた。 士郎が落ち着くのと時を同じくして、アーチャー自身も精神が安定していく。 別段、初めてというわけではない。 どうしようもなく時折、アーチャーは衛宮士郎に対して殺意を抱く。 それをこうして性交の中で発散させているというだけの話で。 アーチャーの中では、衛宮士郎への愛情も殺意も、どちらも等価だった。 殺意を抱くほどに想い続けた果てに生まれた感情が愛情であるからだ。 そんなアーチャーを士郎は受け入れた。 アーチャーの想いは自分のものだと。 だから自分に向く全ての感情を受け止めると決めていた。 元々が衛宮士郎とは歪な存在なのだから、どうということはない。 首を絞められることも、最終的にはその手を離すことが解っているのだから。 自分達の間では、愛情も殺意も、結局は同じ事だ。 「続き、しないのか?」 呼吸が正常になり、発した士郎の言葉は性交の先を促すもの。 内部に感じるアーチャー自身を意図的に締め付けて誘う。 アーチャーは、く、と喉の奥で笑い、士郎の腰を掴んで容赦なく突き上げはじめた。 「首が痛い。」 性交後、横になったまま士郎はそう呟いて、首を擦る。 士郎を腕に抱き込みながら隣に寝そべるアーチャーは、優しく士郎の首をなぞり、 「ああ、赤くなっているな。」 そう言って目を細めた。 そのうちうっかり殺されてしまいそうだと、アーチャーの嬉しそうな表情を目にして士郎はひっそりと思うが、 そう簡単に殺されてやるつもりはないしと小さく吐息するに留めて、アーチャーの厚い胸に頬をすり寄せた。 アーチャーはそんな士郎をしっかり抱き締める。 そうして二人、眠りについて一日が終わり、 また日々は、繰り返されていく。 リクエストありがとうございました! 殺伐で愛、ということでしたので、こんなことになりました。 が、なんというか殺伐多め…?淡々とした二人に。