「何かつけてるのか?」 「え?」 タルタロスを探索している時、真田は前を行く少女にそう声をかけた。 少女はきょとんとしている。言葉が足りなかったかと真田は続けて言った。 「お前から懐かしい匂いがしたから。」 すると少女は疑問符を飛ばしながら暫く考え込んでいたが、 「特になにもつけてませんよ。シャンプーの匂いかなぁ…」 自分の髪をつまみながら真田に答えを返した。 そうかと真田は頷き、それを待っていたかのように横から荒垣が声をかける。 「無駄話はそこまでだ、行くぞ。」 「ああ。」 「はいっ」 荒垣の言葉に真田も少女も頷き、探索を再開する。 先導する少女の後ろを守るように荒垣が真田の前に出る。 その時、真田はふいに理解した。 『彼女から、シンジの匂いがしたんだ。』 何故、彼女から荒垣の纏う匂いがしたのか、その時の真田はあまり深くは考えなかった。 ただ納得しただけだった。 最近良く一緒にいるからなと、それは自分にも言えることだったので、そんな風に思っただけで。 そう、考えなかっただけだ。その時に感じた僅かな胸の軋みの理由を。 くたりと腕の中で意識を失った少女。 背後から少女の内に穿っていた自身を引き抜いて、裸の背に口付ける。 「……せん ぱい」 小さく『誰か』を呼ぶ声。項に顔を埋めて抱きしめる。 初めて抱いた時にはまだあった荒垣の匂い。 その匂いさえも消えた。 今はきっと自分の匂いしかしないのだろう。 それが少し物悲しくて、真田は少女をいつも『荒垣のベッド』で抱く。 不在である彼を想いながら、少女にぶつける。 少女はその全てを、その体で必死に受け止めていた。 薄暗くなっても仕方ないよね!!!! いやもうほんと、ごめん。 長い時間後のタルタロスでの出来事でした。 リクありがとうございましたー!