「君はもう必要ない」 深夜。 誰もいない歩道を歩きながら、折原臨也はナイフの刃にこびりついた血の赤を指で一撫でしてぽつりと呟き、すぐに思い直す。 『いや、出会った時から必要だったことなんて一度も無いけどね、シズちゃん。』 そうして先程の出来事を思い出す。 池袋に出向き、天敵である平和島静雄に見つかって、いつものように適当にあしらって逃げてきた。 ナイフに付いた血は静雄のものだ。 深く切りつけた筈なのだが、相変わらず薄皮一枚裂いただけのようで。 年々殺すことが困難な身体に成長している気がする。 忌々しいことこの上ない。 「さっさと死ねばいいのに。」 心から臨也は呟く。 ポケットの中に入っていたティッシュでナイフの血を綺麗に拭ってから、折り畳んで袖に仕舞い込む。 「ああ、でも…」 そっと囁くように口にして、臨也は空を仰いだ。 真っ黒な空。地上の灯りに負けて星は瞬かない。 目を細めて心中で続きを言葉にした。 『殺してやりたいけど、シズちゃんの命を背負うのも嫌だな。』 やっぱり他の誰かに殺してもらうのが一番だよね。 そう思うと昔は考え無しだったなあ。臨也は苦笑を零しながら歩く。 いっそ願い事でもしてみようか。シズちゃんが早く死んでくれますように。 くすくすと、笑みは愉しげなものに変わっていく。 理解したくはないが、臨也は理解していた。 好意の反対は嫌悪ではなく無関心。 静雄のことを嫌悪している以上、臨也は静雄も『人間』の範疇には入れてしまっているということを。 『人間』を愛している。だが平和島静雄だけは嫌悪する。 その特別性。 どうにもならない自分の感情が腹立たしい。 いっそ無関心になれれば良かったのに。 「……やめた。」 臨也は頭を振り、思考を切り替えた。 いつまでもあんな男のことを考えているのは気分が悪い。 いずれ本格的に考える必要もあるだろうが。 早く帰ってシャワーを浴びて、寝てしまおう。 そうして臨也はいつも通りに歩く。 人畜無害な表情を貼り付けて、闇の中をただ、静かに。 1巻前か、1巻と2巻の間あたりとか。 原作読んでると、本当に臨也の静雄に対しての感情というか殺意がシャレにならないレベルなので、 カプとしては自分では妄想できないんだよなぁとか。おいしいのは解る。だから見るのは好きなんだが。 アニメだけ見てるとこいつら仲いいなあとか思ってしまえるんだが。