「好き、好き、大好き」 妙な言葉の羅列が聞こえてきて、俺は閉じていた目を開いた。 「愛してる」 何の感情も込めず、ただ呟いている。 そんな男の腕の中に、俺はおさまっていた。 「…なに、言ってん、だ…?」 まだ頭が半分寝たままの状態で、俺は目の前の男、ランサーに聞いた。 「お、起こしちまったか。」 ランサーはそう言って俺の額に口付けてくる。 くすぐったくて肩をすくめた俺をがっちり抱きしめてきて、逃げられない。 やることやったあとで、お互い素っ裸。 せめて下ぐらい穿きたいなあと思いながらも諦めて大人しくしていた。 「いや、今更なんだが、オマエのこと気にいってっけど、言葉にしたらどれかと思ってな。」 そう言ったランサーに俺は瞬きする。 考えてみれば、はっきりそういった言葉を聞いた覚えはないし、 俺自身、言った覚えもなかった。 我ながら爛れた関係だとは思うが、なんとなくノリでこんな関係になってしまったような。 驚きはしたし、初めは抵抗もしたと思うけど……結局流されたってことは嫌じゃないってことだよな、多分。 内心で確認する。じゃあ俺はランサーのことをどう思っているんだろうか。 ランサーが先程呟いていた言葉を俺も心の中で呟いてみる。 好き、大好き、愛してる。 どれも同じようで微妙に意味が違う言葉。 あえて選ぶなら――――。 「「好き」」 口にした答えは、ランサーの出した答えと同時だった。 ランサーは僅かに吃驚した後、男くさい笑みを浮かべる。 「酒が好き、煙草が好き、女が好き。 そういうオレの中でごく自然で当たり前の感情と一緒みたいだ。坊主への気持ちも。」 だから「好き」なのだという。 特別ではなくて、当たり前なのだと。 「俺も、そんな感じだ。」 そう告げて、俺も笑い返す。 そこまで深くも重くもない。でも軽いわけでもなくて。 自然に好きになれるって、ある意味特別ではないだろうか。 「好きだぜ。」 「俺も好きだ。」 初めての告白は、大して甘くもなく、すぐに互いの口内に消えた。 どっちも言いそうにないよな(自分の中で)と悩んだ結果、こんな感じに。 リクエストありがとうございました!