「なんで時間はこんなに早く進むんだろうなぁ?」 釣り糸を垂らし煙草を吸いながら、ランサーはしみじみとそんなことを煙と共に吐き出した。 隣に座ってぼんやりと海面を眺めていた俺はその言葉にぱちりと瞬いて顔を向ける。 「どうしたんだ、いきなり。」 問えば、ランサーは吸っていた煙草を空き缶の口に押し付けて横目で俺を見て、にぃと口端を上げる。 「坊主といるとな、一日が短ぇんだ。」 そう言ってランサーは立ち上がると釣竿を片付け始めた。 言われて俺は、既に海面が沈んだ太陽に照らされて赤く染まっていることに気付く。 直に暗くなってくるだろう。 俺も立ち上がって、なんでさ、と先程のランサーの言葉に対して疑問を投げかけた。 「ま、ベタな答えだが、惚れた相手との楽しい時間はあっという間ってヤツだな。」 実にさらりとランサーは口にして、俺がそれを理解する前に、男はちゅ、と音を立てて唇を重ねてくる。 直ぐに離れてくしゃりと髪を掻き混ぜられて、ひらりと手を振り立ち去る背中を俺は呆然と見送った。 我に返ったのは、視界からランサーの姿が完全に消えてから。 「……やられた。」 呟いて、手の甲でぐいと唇を拭う。 酷く顔が熱いのは、きっと気のせいだ。 なんか兄貴には夢見る乙女な気持ちになるんだ……。 槍はほんとにかっこいいよ!