「君が居れば良い」 幽遊白書 幽助と蔵馬





「オレは君が居れば良いんだ、幽助。」 「……オメーの真顔、怖いって。」 幽助の営むラーメン屋台。 暫く雑談しながらそこでラーメンを食べていた蔵馬は、食べ終えた直後に突然告げた。 他に客はいない。だからこそなのだろう。 蔵馬はそのあたりのことに抜け目は無い。 幽助は頬を指先で掻く。 付き合いもそれなりに長くなったせいか、蔵馬の冗談と本気を見分けることは今ではそう難しくはない。 なので、先程の言葉は本気なのだと解って、さてどう返すべきかと悩んでいた。 一方蔵馬は幽助からどういった反応が返ってくるのか色々と予想しながら待っていた。 先程の言葉に嘘は欠片も無い。 実のところ、かなり昔からそう思っていた。 もしかすると、幽助と初めて関わった事件――母親を助けるために命をかけた自分に、命を分けてくれた、その時既に。 『きっともう、覚えてないんでしょうね。』 蔵馬はそっと笑う。 恩着せがましい所など、幽助には全く無い。 ごく自然に手を差し伸べてくれる。 そんな所に皆、惹かれていく。 自分も例外無く。 幽助は考えようとして、深く考えるのは止めた。 代わりに手を動かす。 空になった器の中に新しくスープを入れて、麺を入れる。 チャーシュー、海苔、葱。 味玉はオマケに通常より多く。 「幽助?」 蔵馬が問うように名前を呼ぶと、幽助はいつものように笑い、 「サンキュ。オレの気持ちだ、受け取れ!」 そう言って蔵馬の前にラーメンを差し出した。 蔵馬は瞬きして、 「…かなわないな、幽助には。」 参ったと小さく両手を上げて、それじゃ遠慮なくいただきますと手を合わせて、 幽助の気持ちだというラーメンを食べることにした。 「そういや蔵馬、コエンマにちらっと聞いたけど、タマってんだって?なんなら相手してやろうか。」 幽助の突然の言葉に、口の中のものを噴き出しそうになりながらも蔵馬は平静を装った。 アチラの意味にもとれる言い方だなと妙に冷静に思いながらも、口の中のものを飲み込んでから、 「幽助がやりたいだけじゃないんですか?」 そう言うと、バレたかと幽助はアッサリ認める。 「考えてみれば、桑原、飛影とはやり合ったことあるけど、蔵馬とは無いよな。  初めて会った時もオメー闘う気無かったもんな。」 幽助は期待を込めた目で蔵馬を見る。 バトルマニア、そんな言葉が蔵馬の脳裏に浮かぶ。 本当に彼にぴったりの言葉だ。 蔵馬は小さく笑い、 「いいですよ。実はオレもずっと思っていました。機会はありませんでしたが。」 了承の言葉を返すと、幽助の顔は喜びに満ちた。 そんな幽助につられるように蔵馬も幸せな気分になる。 こんな風に自分達の関係は変わらないまま、これからも続いていく。 蔵馬は疑いもなく、そう信じることができた。 これもED後ということで。久しぶりに色々思い出して楽しかったです。 リクエストありがとうございました!