「もう、無理、だってば……この、ケダモノ…!」 小さく叫んでわたしは目の前、再び覆い被さってきた男の顔目掛けて枕を叩きつけた。 くぐもった呻き声のあと、その枕は男の手に奪われる。 物足りなさそうな顔。 そんな顔見せられても、もう無理なものは無理なのだ。 わたしは精一杯男を睨みつけた。 男は一つ溜息を落として、わかったよ遠坂、そう言って枕を元の位置に戻すと横にどさりと寝転んだ。 わたしはというと、そいつの腕を枕にした状態で転がされる。 髪を撫でられ気持ちよくて、わたしは目を閉じた。 衛宮士郎。それがこの男の名前。 まだ学生だった頃、聖杯戦争がきっかけで知り合い、付き合いが始まり、 その後師匠と弟子の関係で数年。 肌を初めて合わせた時から感じていたことだが、士郎は普段は物凄く人畜無害に見えるが、 理性が吹き飛ぶと、とんでもないケダモノだった。 しかも年々、なんというか、遠慮が無くなってきたというか。 背が伸びて、体つきも逞しくなってきて。 体力が増したせいもあるのだろうか。 正直まともに付き合うと、翌日は動けない有様になるのだ。 「…ホント、育ちすぎよ衛宮君。」 口を尖らせてぽつりと呟くと、士郎はきょとんと少し間の抜けた顔を見せた。 それが可笑しくてクスクスと小さく笑ってわたしは士郎の前髪をそっと上げてみた。 アイツに似ているとは思わなかった。 本当は似ているのかもしれないが、わたしから見た士郎はアイツとは違った。 間違わない。わたしが愛しているのはあくまでも士郎なのだ。 勿論アイツのこと、あの弓兵に対して親しみのようなものは、今も持っているけれど。 「……似てきたか?」 士郎が訊いてくる。 「いいえ、全然。」 私はそう答えて笑う。 そうか、そう言って士郎も笑った。 わたしは身体を寄せて士郎に触れるだけのキスをした。 士郎はただ黙ってわたしを受け入れる。 胸に顔を擦り寄せると、優しく抱きしめてくれた。 士郎がこうして抱きしめてくれる。 ベッドの中でだけ、わたしは一人の女になる。 そうしてわたしも士郎を抱きしめる。 どこにも行ってしまわないように。 慣れてくると夜大変そうだな、とか。 なんというか士郎、がっつくイメージがね^^