ノ―ノートの切れ端に綴った言葉 P3P ハム子





「どうしようかな。」 少女は寮の自室で小さく溜息を吐いて、手の中のペンを机の上に転がした。 最近酷く疲れている。 気を抜くとすぐに瞼が落ちてしまう程に。 その理由を少女は理解していた。 自分だけ、記憶はそのまま残っていたから。 影時間というものが存在したこと。 かけがえのない日々。 死と向き合い、答えを得たこと。 何故自分だけが憶えているのか、という疑問は勿論あったが、 きっとワイルドという力があったことが原因なのだろうと納得することにした。 仲間の皆は、綾時の言葉の通りに影時間の記憶を失っていた。 それでも積み重ねてきた少女との関係は残っていて、 少女は同学年の皆と同じくらい先輩達とも仲が良かったし、 初等科である少年とも、白い犬とも仲が良かった。 勿論、未だ病院で眠ったままの先輩とも。 最後の戦いで少女は皆を、世界を守る為にある力をつかった。 それは自分の全てと引き換えの力。 皆と共に戻ってこれたのは、約束を果たす、その想いがあったから。 少女は自分の命の期限が其処までなのだと解っていた。 皆は必ずその日には思い出してくれるだろう。 その時、その瞬間まで、時間が待ってくれるのかは、解らない。 だから、皆に宛てた手紙を残そうと思い、何度もペンを手に取った。 ――が、書いては消し、ゴミ箱へ。 何度も何度も繰り返し、最後のレターセットも使い切ってしまった。 どう書けばいいのか、わからなかった。 どんな言葉を残せばいいのか、わからなかった。 「難しいな。」 机の上に突っ伏す。 あの選択をしたことに対する悔いは無い。 ただ、自惚れではなく、きっと皆を哀しませてしまうだろうことには罪悪感があった。 「…やっぱり、この言葉かな。」 決心して、学園で使っているノートを取り出して、最後の白紙のページを一枚千切る。 みんなへ、と一番上に書いて、あとは二行、自分の素直な気持ちを短く書き綴った。 最後に自分の名前を書いて、小さく折り畳む。 そして、そっと机の端に置いた。 あまり仰々しくしたくはなかった。 それこそ遺書のようには。 皆なら見つけてくれるだろうと信じて、少女は椅子から立ち上がり、 倒れこむようにベッドに横になって目を閉じた。 机にぽつんと置かれたノートの切れ端。 そこに書き留められた言葉は、 ごめんね と 大好きだよ ただそれだけだった。 P3Pの主人公は酷いよねってことで。 いやまあどうしようもなかったのは解るけどさあ!!