与えられる熱





『落ち着いてからで構いませんので、遊びに来てくださいね、お兄さん。』 そう言って地図と住所が書かれたメモをギルガメッシュ(小)は俺に渡してきた。 拒否する理由は別に無かったので、分かったと軽く返して、この時はこれで話は終わり。 三箇日が明けた今日、受け取ったメモの存在を思い出して、俺はそこへ出向くことにした。 「…ここ、だよな。」 メモに示された場所。 それは、新都の見るからに高級なホテルで。 気後れしながらも、折角来たのだからとホテル内に足を踏み入れて。 フロントで確認すると、確かにギルガメッシュは部屋をとっていた。 案内されて、最上階。 ドアをノックしてみる。 ―――反応は無い。 「ギルガメッシュ?」 声をかけてドアに触れると、鍵は開いていた。 俺が来ることが分かっていたのだろうか。 意を決してドアを開け、部屋に入る。 鍵を閉めて中へ。 「…ようやく来たか。王たる我を待たせるとはな、雑種。」 そこにいたのはギルガメッシュ(大) なんでさ。 考えるまでもなく、俺は来た道を戻ろうと背を向け――腕に絡みついてきた鎖に阻まれた。 「…俺、小さい方のお前に呼ばれたんであって、お前に用は無いんだが。」 無駄と知りつつも拒絶してみるが、 「は、何を言っている。アレでは貴様を愛でられぬではないか。」 無駄だった。その上不穏な台詞。 ああ、やっぱりそっち方面なのか。 解る自分にもうんざりだ。 結局、罠に自ら飛び込んだ自分自身が間抜けだったということだ。 俺は、はあと深く息を吐き出した。 おかしい。 何か、ではなく、何もかも、おかしい。 「っ、ぃ あ …く――ぅ…!!」 前立腺を凶暴な熱で抉られて、また達した。 互いの腹に白濁を撒き散らす。 「ぁ… っ、な んで 俺…ばっか り」 途切れ途切れに疑問を口にする。 そう。この行為が始まってから、俺ばかり達かされていた。 手で、口で、そして後孔の内で。 与えられるのは快感だけ。 ギルガメッシュはまだ一度も達していない。 「どうした、気持ちが良いのだろう?我の事など気にせず存分に愉しむがよい。」 ギルガメッシュはそう言うと、目を細めて俺が吐き出した精液を指に絡め、 その濡れた指先で俺の胸の尖りを撫でてくる。 ぞくぞくと体の奥に熱い痺れが走り、俺は目を閉じて喉を鳴らした。 目尻に溜まっていた涙が零れる。 そしてまた、前立腺を擦られ、快楽が、下肢から押し寄せてきて。 「っ、あ ふ っあぁ…っ」 際限なく、啼かされる。 「…なに、ただ気が向いただけだ。奪うだけではなく時にはこうして与えるのも…悪くはない。」 そんな言葉が耳に届いた。 この行為に限って言えば、奪われようと、与えられようと、どちらも同じだ。 寧ろ与えられる方が、ある意味辛い。 終わりが、見えない。 「ぅ ん…っ、あ」 「…良い声だ。もっと啼いてみせよ。――愛してやろうぞ、士郎。」 「ぅあ……!」 甘い、凶悪な、囁き。 唇をなぞられて、重ねられる。 年の初めからこんな目にあうなんて、自業自得とはいえ最悪だ。 王の愉しみなど、理解できるはずもない。 今度からは小さい方にも気をつけよう、なんて詮無いことを思いながら。 ただギルガメッシュが厭きる時を待つしかなかった。 深い快楽に沈められて、俺はギルガメッシュが望む通りに泣いて、鳴いて。 意識が途絶えるまで、啼かされた。 なんて、災難だ。 2009年1月 159c 梨雪 新年小話TOPへ戻る