青空の下で





衛宮士郎と衛宮シロウ。 二人は穂群原学園ではちょっと有名な双子の兄弟だった。 顔は瓜二つだが、髪や目、肌の色が全く違う。まずそれだけで目立った。 弓道部に所属してからは、ますます注目された。 士郎もシロウも、弓の腕がかなりのものであった為だ。 弓を引けば中るのは真中、では目立たない方がおかしい。 そして、二人の、誰も入り込めない程の仲の良さも有名だった。 クラスは違うが、休み時間などは大抵一緒にいる。 それがお互いに約束して会っている訳ではないと聞くと、 皆、双子の神秘だと騒いだものだった。 勿論、この二人が双子以上の関係であることは誰も知らないし、知られる訳にもいかなかったが。 双子ということに加え、二人は元々の源流が同じ者だったので、尚更お互いのことが良く分かった。 そして、前世からの縁でお互いに想い合っているのだから、望む行動が重なるのも必然で。 今の時期は寒いためか、昼休み、屋上に人影は無い。 最近は昼休みを屋上で過ごすことが多かった。 「アーチャーは…まだ来てないのか。」 士郎はそう呟いて、定位置である給水塔の影に腰を下ろし、持参した弁当の包みを開いた。 朝食は普通にアイリがつくっているが、弁当は自分たちが交代でつくっていた。 手間はそう変わらないかもしれないが、自分のことは自分で、というのが 士郎とシロウーアーチャーの持論だったからだ。 今日はアーチャーのつくった弁当。おかずを一品箸でつまんで口に含む。 「…む。」 思わず士郎は唸る。それは自分がつくるものよりも美味いと感じる為だ。 味付けが少し、違う。それが自分の好む味付けなのだから、悔しいとしか言いようが無い。 転生しても勝てないのか、と思うと軽くへこむ。 「口に合わないか?」 「逆。美味いから悔しい。」 「ならばもっと美味そうに食べたらどうだ。」 「ほっといてくれ…って、あれ?」 掛けられた問いかけに普通に返答していて、はたと気付き士郎は横を見た。 そこにはいつ来たのか、アーチャーの姿。隣に腰を下ろしてくる。 「遅かったな、アーチャー。」 「ああ。教師に捕まってな。」 アーチャーも士郎の隣で持ってきた弁当を開ける。 士郎はそれを見て、自分も食事を再開した。 冷めても味が損なわれないよう調整された味付けは、流石としか言いようが無い。 口に含むたびに士郎は唸る。 堪えきれなかったのか、横からアーチャーが忍び笑いを零す。 「…俺、弟の方が良かったかも。背も負けてるし、料理の腕だっておまえの方が上だし。  魔術の扱いだって……双子なのに、弟の方が兄より出来るなんて不公平だ。」 恨めしげに士郎が言う。それにアーチャーはくつくつと笑いながら、 「だが、おまえが弟だったなら、オレより優位に立てるものが何一つなくなるぞ。」 意地悪げに言った。 腹が立つが、言い返すことが出来ず、士郎は小さく唸ってアーチャーを睨んだ。 そんな士郎の頭をアーチャーは、ぽんと軽く手のひらで叩いて。 「そら、唸っていないで、さっさと食べてしまえ。」 そう声をかけて、自分も箸を動かし始める。 アーチャーの表情は柔らかく、甘い。 途端に恥ずかしくなって、士郎は慌てて顔を俯けて弁当をつつき始めた。 一線を越えてからというもの、アーチャーの雰囲気は随分変わったように思う。 士郎にとって、その変化は嬉しいものであり、同時に照れくさくもあって複雑だった。 一線を越え、空白の一週間を経て、その後激しく求められた。 その時に士郎は、触れられないことの辛さを知り、 だが、家族に知られた以上、家でそういった行為に及ぶことには抵抗があるので、 家では普通の兄弟でいようと言って、アーチャーもそれを了承した。 かわりに、家でなければいいとも言った。 そうなると、必然的に触れ合う場所は限られてくる。 食後のお茶を飲む。 二人は寄り添って。 静かに時間は過ぎていく。 誘ったのは、どちらだったのか。 同時に、お互いに顔を見合わせて、引き寄せられるように唇が重なった。 初めは軽く合わせるだけ。次第に重なりは深くなる。 押し付けて擦り合わせ、舌を出して舐める。 互いの口内を舌で撫でる。ぴちゃ、と濡れた音。 アーチャーの腕が士郎の腰を、ぐ、と引き寄せて、体が密着する。 「ん……ふ、ぅ」 「…ん」 二人の唇の隙間から零れるのは、くぐもった甘い声と吐息。 士郎はアーチャーの背に腕を回して縋りついた。 呼吸さえ奪うような口付け。 士郎の腰を抱いていたアーチャーの手が、する、と下へ向かう。 その意図を悟り、士郎は慌ててアーチャーから唇を離して。 「ちょ…ま、て。アーチャー、まさか、ここで?」 制止と確認の声をあげた。 「…嫌、か?」 アーチャーが熱のこもった声で問う。 その目は既に、情欲に融けていて。 「嫌、じゃないけど…学校だぞ。それに、昼休みももう終わる。」 「構わないだろう。それに、授業時間ならば人が来る可能性も放課後より低い。」 士郎の言葉はあっさりとアーチャーに流された。 色々信じられない気持ちで士郎はアーチャーを見る。 アーチャーは、午後の授業をサボると言っているのだ。 「アーチャー」 名を呼んだ士郎を、アーチャーがきつく抱き締める。 士郎の耳元に顔を寄せ、そこに口付けて。 まるで甘えるように顔を擦り寄せ、 「オレは今、兄さんが、欲しい。」 士郎の中に吹き込むようにアーチャーはそう、囁いた。 兄さん、と呼ばれる響きに背徳を感じて、士郎は体を震わせた。 このタイミングでそう呼ばれると、堪らない。 絶対にわざとだと思いながらも、抗えない自分を自覚して、士郎は深く息を吐いて。 答えるかわりに、ゆっくりアーチャーを抱き返した。 士郎の答えを受けて、アーチャーは嬉しげにそっと笑みを零した。 「っぅん、アー、チャー…そこ、ばっかり、弄るな…っ、ふ」 士郎はアーチャーの髪をくしゃりと掻き混ぜる。 アーチャーは先程からずっと士郎の胸、赤い尖りを口に含み愛撫していた。 制服は脱がさないまま、シャツを上に捲りあげて肌を露わにし、 口と指を使い、左右交互に。 与えられる愛撫にそこは硬く勃ちあがり、真っ赤に充血している。 「ん…?好きだろう、ここを、こうされるのは…」 アーチャーはそう言うと、かり、と先端を甘噛みする。 「ぃ…っ、ゃ、あ」 体を揺らして士郎は身を捩ろうとするが、それも叶わず、 ただ、目の前の男に縋りついて熱い息を吐き出した。 そんな士郎の様子を満足気に見つめたアーチャーは、顔を胸から下肢へと移動させていった。 腰掛ける士郎の前に跪き、制服のズボンの前を開き、下着の中、 既に張りつめている中心の熱を外へ引き出す。 「あ……っ」 アーチャーに直に触られて小さく士郎が声をあげる。 構わずアーチャーはその熱を自分の口内へ導いた。 「っ、ぅあ…っあ、はぁ…っ」 途端に士郎は甘い声を零した。 熱く濡れたものに包まれ、扱かれるその感覚に、目の前が真っ白になる。 アーチャーは士郎の熱を丁寧に高めていく。 舌をつかい、擦り、きつく吸い上げて、先端から滲み出てくる腺液を啜る。 指で優しく揉んで、時折軽く歯をあてると、おびえたように震える士郎を愛しく思う。 次第に涙混じりになる声。促すように強めに吸い上げ、きつく手で扱くと。 「ふ、ぅ…んっ、ん…!!」 あっさりと士郎はアーチャーの口内に白濁を吐き出した。 それを躊躇わず飲み込み、続けて含んだままの士郎の中心を煽るように舌でなぞる。 「ゃ、だ…も……っ」 達した後の過敏なそこを続けざまに弄られて、士郎は緩く頭を振る。 力の入らない腕でアーチャーを引き剥がそうとする。 それを無視してアーチャーは硬く張りつめるまで士郎の中心を嬲ってから、ゆっくりと顔を上げた。 「ぁ…」 ぎりぎりの所で解放されても逆に辛いだけで。 縋るような涙目でアーチャーを見る士郎に、淡く笑んで、 アーチャーは制服の上着の内ポケットから、それを取り出した。 端を口に銜えて、びっ、と音をたてて封を切る。 中身を取り出すアーチャーを呆然と士郎は見上げて、 「おまえ、そんなの、どこで……」 訊いた。 所謂、スキン、というやつだ。 今はどこでも気軽に買えることは知っているが、 まさかアーチャーが自分で買って用意したとも考えにくかったからだ。 「…知りたいか。」 何故かアーチャーは遠くを見るような目で言う。 「やっぱりいい。聞きたくない。」 嫌な予感がして、すぐに士郎は拒んだが。 「切嗣が寄越してきた。持っていた方がいいだろうと。」 「っ、だから聞きたくないって言ったのになんで言うんだ馬鹿っ!」 アーチャーは道連れだとでも言わんばかりにそう告げて、士郎は聞いた自分を心底呪った。 「……こんなことまで、バレてるのか…?」 小さな声で恥ずかしげに呟く士郎。 アーチャーは取り出したスキンを士郎の中心に被せながら、 「ここまで把握しているのは切嗣だけだ。  逆に切嗣に知られたのは不幸中の幸いだろう。  …アイリとイリヤに対して、フォローが望めるからな。」 そんな風に言った。 そのアーチャーの言い分は士郎も理解できたので、う、と小さく唸るだけで返した。 アーチャーはスキンに付いている潤滑剤で指を濡らし、その場に腰を下ろして士郎を促す。 士郎は片足だけズボンを下着ごと脱いで、躊躇いながらもアーチャーの足の上に跨った。 アーチャーは士郎の腰を引き寄せて、奥の後孔を探り、濡れた指で初めは優しくそこを揉みこんだ。 むずむずするような感覚に、ん、と士郎の喉が鳴る。 指がそこに、潜り込みはじめる。 ゆっくりとアーチャーの指は士郎のそこを開いていく。 「は……っ、アーチャー、おまえも、つけるんだよ、な…」 息を荒げながら士郎は、アーチャーに聞いて。 俺がつけたい、と、掠れた声でそう強請った。 アーチャーが一瞬だけ息を呑んで、士郎に了承の意味を込めて頷いて見せた。 アーチャーの両手は士郎の後孔を弄ったまま。 士郎はアーチャーの上着の内ポケットを探ってスキンを手にとり、 震える手で封を開けて、アーチャーのズボンの前を開き、その中心を外へと出した。 アーチャーの中心は既に張りつめていて。 平気そうな顔をしていたが、そんなことはなかったのだと知り、 嬉しい反面恥ずかしさも感じながら、恐る恐るスキンをそこに被せていく。 その間もずっと士郎のなかをアーチャーの指が蠢いていたので、 何度もその与えられる感覚に手を止めてしまったが。 「そろそろ、いい、か?」 アーチャーが熱のこもった声で問いかけるのに、士郎は小さく頷く。 後孔から指を引き抜き、アーチャーは士郎の腰を引き寄せて、 物欲しげにひくつくそこを、指で広げながら、自身をあてがった。 「士郎。」 「っ…、ん」 アーチャーの促す声に、一度だけ怯えるように震えたが、 士郎は覚悟を決めるようにぎゅ、と瞼を閉じて、腰を、落としていった。 「っ、あ、は…ぁ、あ、く…ぅ!」 堪えきれない声を零しながら士郎はアーチャーの熱を呑みこんでいく。 その姿を目にとめて、アーチャーは自身の熱がさらに煽られていくのを自覚する。 途中で躊躇うように士郎の動きが止まった。 全ておさまるまでは、あと少し。 は、は、と息を荒げてアーチャーの肩に縋る士郎。 目尻には涙が溜まり、瞬きひとつで涙は頬を伝い落ちた。 その様は、アーチャーの嗜虐心に火をつけた。 ぐ、と士郎の腰を掴む。 「あっ、ま、て…アー、チャ……――!!」 士郎の制止を聞かず、アーチャーは士郎の体を強引に沈めて、なかに自身の全てをおさめた。 士郎が声にならない声をあげる。士郎の内部はきつくアーチャーのそれを締め付ける。 ぐ、と苦鳴を噛み殺し、アーチャーはそのまま士郎の体を揺らし始めた。 スキンで隔てられていても感じる士郎のなかの熱さに溺れていく。 落ち着く間も無く揺さぶられて、士郎は必死にアーチャーにしがみついた。 なかを抉るアーチャーの熱の感覚がいつもと違うことに戸惑う。 僅かな隔たりが切ないなんて、そんなことを思ってしまう自分が信じられない。 「あ、っ、ん、ん…っ、」 士郎の中心をアーチャーが掴み、腰の動きにあわせて扱く。 アーチャーの肩に顔を埋めて、士郎が啼く。 「あ、俺、も……、だめ、だ……っ」 「ああ……っ、オレ、も」 そうして二人、お互いにお互いの体を掻き抱いて。 「ひ、あ…っあ!!!」 「く…ぅ…!」 同時に、果てた。 じわ、と熱を吐き出した中心が滑りに包まれる。 その感覚に士郎はふる、と震えた。 なかのアーチャーの熱が、びく、と跳ねたのを感じたが、 いつものようになかに熱は注がれない、その感覚。 それを物足りないと感じてしまう自分を恥じて、士郎は俯いて唇を噛む。 「士郎」 アーチャーは名前を呼びながら士郎の顔に唇を這わせる。 物足りないと感じているのはアーチャーも同じで。 だからせめて、と口内の粘膜を求めて士郎の唇を舐める。 あ、と溜息のような声を漏らして、薄く開いた士郎の口内へアーチャーが舌を潜り込ませれば、 士郎も目を伏せてそれを受け入れて、自分からも求めた。 しばらくそうして口付けを繰り返して。 その後色々後始末をしているうちに、授業終了のベルを聴いて。 「…結局、午後、全部サボったな……。」 アーチャーに抱き締められながら、士郎はただ、事実をぼんやり口にした。 自分も同罪なので、責めているわけではない。 アーチャーはそうだな、とだけ言って士郎を柔らかく抱き締める。 アーチャーの胸に顔を押し付けて、士郎はけだるさに目を閉じた。 アーチャーの心音が心地いい。 「……なぁ、アーチャー…」 士郎がアーチャーの名を呼び。 おまえが好きでたまらない、どうしようもない、と言って、幸せそうに小さく笑った。 それを受けてアーチャーも、士郎の髪に顔を埋めて。 「ああ。オレも、おまえが愛しくて、どうしようもない。」 そう言って笑う。 本当に、どうしようもないよなと、お互いに言って、笑った。 屋上の冷えた空気も、寄り添いあう二人には、気にならなかった。 10000キリリク。弓士で双子。 ……なんだろう、このバカップル!甘いよ!弓士じゃない…。 うん。パラレルだもの。すみません…! そして、えろがメインです。えろ削ったら話にならないぐらい…。 え、と。前のキリリク双子で、家ではH禁止になったので、じゃあどこでやるんだ、 という話から、学校の屋上かな、という流れになりまして。 それなら、スキンつかわないと色々面倒だろう、とか思って。 このあとぐらいから、落ち着きますよきっと。 ちょっと今は体に溺れちゃっててあれですが。がっつきすぎです、どちらも。 こんなものになりましたが、少しでも楽しんで読んでいただけたら嬉しいです。 10000リクエスト、ありがとうございました!!